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スピーカーの話2

「スピーカーの話2」
ちょっと言いにくい・・ちょっと恥ずかしい?『オーディオの話』の続きです。
前回はアメリカのCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でEPOS(エポス)という小型スピーカーと出会ってその音の良さに愕然と驚き、またウン十年ぶりにオーディオに関心を持ったところまででした。まるで生音!!でしたから・・。

epos.jpg

※EPOSの現行機種からイメージの近いM5を・・・

その後、小生はこの時の体験が引っかかっていて、暇を見て御茶ノ水のオーディオユニオンさんに行ったのでした。
果たしてお店にEPOSのスピーカーは置いてありました。おー!あるんだ!!と言う感覚でした。
このスピーカーの資料としては1枚ものの、白黒印刷の質素なカタログを貰いました。
お店のご担当の話はこのEPOSには割りと淡々としていて、説明も他のスピーカーと比較しても特に力点も置かれず、率直に言うと「余りお薦めではない」ようなニュアンスでした。お値段も小型なのに「お高いぞ」と感じましたし・・・。
試聴もしましたが、棚の上で他のスピーカーとくっついて並んでいるこのEPOSは、CESで感じた感動を・・・それほど再現しているようにも感じませんでした。
あの驚きの生音と同じスピーカーだろうか??
しかし、片鱗はある!!ようにも思いました。なんか音がハッキリとしている。
ただ、それが「もの凄いリアリティーの音」にはなっていないな・・と感じました。

たぶん正確にいうと、音は良いと感じたのですが、その評価に確たる自信を持てるほどの自分では無いので、店員さんの話の雰囲気に巻き込まれて、「そうかなぁ」と刷り込みが入っていた!?のかもしれません。
こう言うときに絶対的な自分の評価を持てる人、持っている人は凄い人・耳の良い人ですね。(小生は自信ありません。ダメです。)

この時小生は、幸か不幸かEPOSを買おうと考えるより、どうしてああいう凄い音だったのだろう・・・と言う考えに向かっていました。
小生にとっての問題・「情報」はこの1枚のチラシの説明の方でした。
設計者ロビン・マーシャル氏は有名なモニターなどの設計を手がけ独立。その氏の信念でダイレクトな音を追求している。
内容はネットワーク回路を排除し、ウーファーはコイルやコンデンサー何も無し!!でスルーで結線(直接結線)。
トゥイーターも音質を吟味したコンデンサー1個だけを使うシンプルな回路。

この情報がかなり気になりました。
小生、電気はダメなのですが、それでも昔のスピーカーの裏側を覗いて見た事くらいはありました。
そこには結構色々な電気部品が繋がっているのは見て、知っていましたので、スピーカーって複雑だなあ・・という印象はありました。
ですので、EPOSには回路部品が殆ど無いという話には『へぇー!』と驚きました。

この事はかなり印象が強くて、心に引っかかりました。

『そうなんだ。余計な回路部品は音を汚すんだ。だからネットワーク回路はシンプルなのが良いのかもしれない』と言う具合に頭に入りました。

そこからが少々の探究の旅??になりました。
回路の無いスピーカーって何者じゃ??と探してみました・・・。
そして、突き当たりました。
ネットワークを排除する考え方に・・・。
これは、フルレンジスピーカー(全帯域対応スピーカー)を使ったスピーカーシステムと言うのがその代表的なものでした(スピーカー・ユニット単体ではなく、箱に入っていて、そのまま使う状態をスピーカーシステムと言うらしいです)
スピーカーの中で、高音から低音まで1個で全部カバーするのがフルレンジスピーカーです。俗にこれを好きな方々は、フルレンジ一発のスピーカーなどと言います。

ちなみに、何個かユニットが付いたスピーカーシステムをよく見かけると思いますが、それぞれのユニットは、
超高音の担当がスーパートゥイーター。
高音だけを担当するのがトゥイーター。
中音だけがスコーカー。
低音の担当がウーファー。
この下にはスーパーウーファーが・・・。と言う感じで周波数を分担しています。
そのため入ってきた音楽を周波数で分割する回路・・・これをネットワーク回路と言うそうですが・・・必要なのです。
このネットワーク回路が「音を汚す」と言う考え方があり、EPOSのロビン・マーシャル氏もそうなのでしょう。小生は興味がありました。
小生は分からないながらEPOSで久しぶりにオーディオに興味を持ったこともあって、このネットワークを極力廃す考えに、仮に賛同しているような立場で情報収集していました・・。
もちろん世の中にはネットワーク回路の弊害を云々するよりも、この回路は必須だから良質に最適設計でやるのだ!と言う考え方の人も多いと思いますが・・・。

この情報収集の過程で、過去の一つの記憶・・の登場!もありました。
30歳の頃、おもちゃメーカーの開発本部の同僚仲間が、休日に会社に出勤し、工作室でなにやらベニヤの部品を組み立ててスピーカーを自作していたことを思い出したのです。
彼は「長岡先生のスワンという名機・スピーカーを自作しているのだ!!」と、かなりの講釈を聞かせてくれました。小生も面白がってこんなに小さなスピーカー1個で高音から低音まで再生できるのか?等、質問したりして興味深く聞いた記憶がありました。
残念なことに、この時、彼「Oさん」のスワンの音を聞いてはいません。組み立てた後すぐに、自宅に持って帰りましたから・・。

フルレンジ一発で追い駆けると小型スピーカーや長岡先生が多く出て来ました。(長岡先生はスピーカー自作派のオーディオ評論家の先生で、多数のスピーカーを設計し自作し、性能を検証してきた方で、本当に有名な、信者の多い先生です。)(先生は残念なことに他界されていらっしゃいますが・・・)

長岡先生が出てくると、小生は過去の記憶の「同僚Oさん」のスワン・・が出てきたわけでした。

さらに、もう一つのチャンスがありました。
試聴する機会です。・・秋葉原のスピーカーユニット屋さん等で、情報を取ろうとウロウロしていますと、コイズミ無線さんというスピーカーユニット販売の専門店さんに行き着きます。
その本店、秋葉原駅前のミツウロコビルの確か5階に、当時(今から10年以上前)完成品のスワンが展示してあったのです。
このスワンは、Oさんのスワンの頃から比べると、その後のフォステックス(FOSTEX)社のスピーカーユニットの進化に伴って、相当進化していて、「スーパースワン」になっていました。
しかも、このショップの独自企画の高性能な箱でした。曰く、木工の専門工場で「さくら」などの吟味した素材で、最高の加工精度で組み立て済み・・・お値段も箱だけで片側15万円くらいする代物でした・・。

この音は凄かったのです。
CESのEOPSで感動したほどではないのですが、それでもかなり驚きました。
音がくっきりと鮮明で、自分の方に向かって、高速に飛んでくる感覚。低音も十分に出ています。たった10cmの口径のスピーカーとは思えない低音です。
音のシャワーが顔にパシパシ当たるような感覚と言うのでしょうか。
長岡先生はハイスピードという表現を使っていますが・・・。
かなり驚いたのでした。

『これだな!!フルレンジ一発のバックロードホーン』と思いました。
バックロードホーンと言うのは箱の形式です。
この形式の箱は、小型のスピーカーユニットを使った場合に、不足しがちな低音をカバーする仕組みを組み込んだ箱なのです。
仕組みと言っても簡単で、ラッパです。
スピーカーの後ろから出た音を、ラッパ状にだんだん大きく広がる音の通路に導いて、低音を取り出す箱なのです。

これで、小生のEPOSの感動の再現は、

①フルレンジスピーカーのユニットで、
②ネットワーク回路を使わず、
③バックロードホーン形式の箱を使い、低音を十分再生する。

自作・工作のプロジェクト(大げさですみません)に相成りました。

・・・そうです。
1台15万円、ステレオで30万円の完成済みの豪華なスーパースワンの箱の購入!!でも当面の狙いは達成できたのですが、当然ですが・・・小生はローコストな自作を選択したのです。

これが、その後スピーカーを設計して作る趣味に・・・繋がってしまうのですが、この頃の小生はそんな考えは微塵も持っておらず、あの時のCESの感動に近づきたいなあ・・とだけ考えておりました。

次回はこの自作の話を・・・。

swan001.jpg

※小生自作のスーパースワン

沢山作ってますのでじっくりと・・・。

11-06-06 11:52